2005128日(木)日本時間:1時〜2時半 

中国側: 中国各地からJICA北京事務所に集まった日本語作文コンクール優秀者30

日本側: 埼玉県立和光国際高等学校外国語科3年生8名(中国語V選択者)

 

埼玉県立和光国際高等学校 中国語担当: 植村 麻紀子

 

<事前準備>

中国語の授業は毎週水曜日(50分)と木曜日(90分)の週2回しかなく、担当者は非常勤講師で、直前に中間試験もあるため、会議1ヶ月前から準備をスタートした。

119日:生徒に開催告知。当日、全員が自己紹介をすると時間がかかるので、事前に手紙形式で書いて中国に郵送することとする。当日話したいテーマを挙げてみる。

1110日:自己紹介を中国語で書く。学校生活に関する簡単な会話練習。

1116日:引き続き自己紹介文の作成ならびに当日の役割分担(テーマを4つに絞り、それぞれ1名が代表して質疑応答にあたることとする。ほかに2名が学校・メンバー紹介、2名が総合司会と、8名全員が必ず一度は中国語で話す機会を設けることとする)

1117日:自己紹介文回収。各自、担当するところを中国語で作文、添削。

1124日:当日の進行表配布。各テーマの回答を全員で話し合う。(当日は代表者が発表)

127日:前日リハーサル。当日と同じ教室で立ち位置等確認。司会の進行に沿って一度通してみる(中国語の発音チェックも兼ねる)。

 

<当日の流れ>

1、はじめの言葉 総合司会(和光国際高校:嵐口さん、釜我さん)

2、学校ならびにメンバー紹介

   日本側:篠塚さん、矢口さん

   中国側:湖南大学 施明亮さん

3、テーマ討論(各テーマごとにまず日本側が質問、中国側が回答。引き続き同じテーマで中国側が質問、日本側が回答。質問は双方とも中国語、回答は双方とも日本語を使用)

 @「日本/中国」と聞いて思い浮かぶイメージ、もの、場所、人などを具体的にいくつか挙げてください。(日本側代表:清原さん)

 A「中国/日本」の若者(高校生や大学生)が関心のあることは何ですか。休日の過ごし方、ファッション、音楽等について教えてください。(日本側代表:深沢くん)

 B「日本語/中国語」の勉強は面白いですか。難しいですか。どんなところが面白く、また、難しいですか。日本語で好きな言葉があったら挙げてください。(日本側代表:遠藤さん)

 C最近の日中関係について、どう思いますか。(日本側の質問→今年の春、中国で反日デモがありましたが、中国語を学んでいる私たちはショックで、悲しかったです。日本語を学んでいるために、皆さんがいやな思いをしたことはありませんでしたか。)(日本側代表:榎本くん)

4、自由討論

 上記4つのテーマ以外で、何か聞いてみたいことがある人に手を挙げてもらう。

〔中国側から出た質問〕

 @日本のドラマで「GTO」というのがありますが、あの中に出てくるような高校生や先生はいますか。

A日本のドラマで「神様もう少しだけ」というのがありますが、あの中の主人公の女性の生き方をどう思いますか。

B桜が日本人に好かれる理由は何だと思いますか。

C小泉首相と天皇のことを日本の高校生のみなさんはどう思いますか。どんな位置づけですか。

D日本の若者の間で流行っている言葉はありますか。「超〜」とか「まいう」(←おいしいという意味の「うまい」から)とか。

E日本の女性はあまりインターネットやE-mailをしないと聞きましたが、本当ですか。

F日本の「電車男」に出てくる「オタク」のことをどう思いますか。日本ではもてますか。あなたは「オタク」が好きですか。

G日本の女性にもてる男性の条件は何ですか。

Hどんなアルバイトをしていますか。1時間いくらですか。

I日本のサラリーマンは「過労死」するほど勤勉だと聞きますが、高校生や大学生は遊ばないのですか。遊びから仕事にどうやって切り替えるのでしょう?

〔日本側から出た質問〕

 @みなさんが日本語を勉強しようと思ったきっかけ、理由は何ですか。

A中国で「きれいな女性」、「かっこいい男性」の条件はそれぞれ何ですか。

B日本では今、「ヒルズ族」や「セレブ」など、お金持ちの人に注目が集まっていますが、中国でもお金持ちの人はもてますか。

5、今日の感想(日本側2名、中国側4名)

6、終わりの言葉(司会)

 

 

 

〔中国の大学生が面白いと思う日本語の表現・ことわざとして挙げたもの〕

・ただより高いものはない

・あやまってすむなら、警察はいらない

・清水の舞台から飛び降りる

・両手に花           等

 

<授業担当者より>

 わたし自身、テレビ会議は初めての経験だったので、事前にどんな準備をしたらよいのか手探りの状態で始めました。非常勤講師であるわたしが生徒と顔を合わせるのは週2日、その上、大学受験を控えた3年生ということで、1ヶ月前から計5回の授業内だけで準備ができるよう計画を立てました。また、JICA北京事務所の方と、当日の流れや使用言語、時間配分等、こまかな打ち合わせをメールで行いました。事前にテーマを絞って双方が回答を準備していたのでスムーズに進み、自由に質問しあう時間がたくさん取れたことで、肩肘張らずに、楽しく中身の濃い交流ができたと思います。

日中関係の悪化が懸念される昨今、それをテーマに取り上げることには不安もありましたが、生徒たちは、「中国の方が日本のことをよく知っていて、日本に関心をもって頂いているんだなぁと思うと嬉しかったです」(遠藤さん)、「実際に話す前までは、意思が通じ合わないのでは、反日感情でムードが険悪なのでは、等々さまざま考えていたのですが、終わってみて振り返るとすべてが杞憂に思えます」(清原さん)、「やはり一番良かったと思ったことは中国の方々が日本のことを好きでいてくれたこと」(榎本くん)、 「日本も中国もこういう人たちが増えればお互いに仲良くやっていけると思った」(釜我さん)という感想を寄せています。また、生徒たちはみな、中国の学生の日本語が上手であることに驚き、「話すことはもちろん、聞き取る力がすごかった!私たちが話していることはほとんど理解してくれていたし、そのおかげで会議もスムーズに進んだと思います」(篠原さん)と語っています。

しかし、中国の学生の日本語の能力や日本への関心をある程度知っていたわたしにとっては、むしろ、私の生徒たちの回答ぶりに拍手を送りたいという気持ちでした。桜の散る様にも美しさを見出す日本人の心や、天皇や首相の位置づけなど、とっさに聞かれて堂々と自分の言葉で答えるのは容易なことではありません。英語の授業でのディベートやスピーチをはじめ、和光国際高校における日頃のさまざまな指導の賜物だと感じました。

中国語の授業担当者としては、生徒たちの中国語の運用能力を高めることはもちろん、ことばの背景にある文化や歴史等を今まで以上にもっと語っていく必要を感じました。また、生徒の発音チェックや会話・作文指導などに十分な時間が取れなかったことも少々心残りですが、「中国のことを知って、より中国が好きになったので、今度ぜひ中国に行って、よりたくさんの事を学びたいと思います」(矢口さん)、「今度このような機会があれば、その時は中国の歴史や文化の知識と日本の歴史や文化の知識、そして問題一つ一つに対する自分の意見をしっかり持ち、中国の大学生たちと対等に討論したいと思います」(嵐口さん)、「若い僕たちが新しい日中の架け橋になれる」(深沢くん)という生徒たちの今後に期待をしたいと思います。

最後になりましたが、今回の企画、準備、運営等にかかわってくださった先生方、JICA事務所の方々はじめ関係者のみなさまに、心より御礼申し上げます。ありがとうございました。